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Channel: mono森音
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音楽のフェア始まりました。

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みなさんこんにちは。森音CDフェアを担当しているスタッフのジュリです。
「ブランケットのような音楽」をテーマに、毎年冬に開催している音楽のフェア「Under the Blanket」。2012年からスタートしたこのイヴェントも、気づけば今回で6度目の開催になります。ありがたいことに、このフェアを心待ちにしてくださっているお客様が、回を追うごとにどんどん増え続けています。「次のCDフェアはいつ?」「Under the Blanketに行きたいから、仕事のシフトを調整しました!」など、毎回涙が出そうになるほどの嬉しいお言葉を、たくさんの方からかけていただいております。みなさま、いつも本当にありがとうございます!音楽のフェアを通して、お客様との温かな出会いや繋がりを実感するたびに、この催しを続けてこられて本当によかったなと、胸がじーんと熱くなります。そんな「音楽が繋いでくれた縁」を想うとき、いつもこの言葉が頭の中に浮かんできます。

「音楽は人と人との出会いの可能性をひろげるもの」 

この言葉は以前、アルゼンチンを拠点に活動する孤高の天才音楽家、カルロス・アギーレが語ったものです。シンプルだけど、心にストンと落ちてくる、やさしいお告げのようなこの言葉に、わたしは今まで何度も勇気をもらってきました。

実は今回、この言葉を座右の銘にされている、森音のフェアではなくてはならない最重要人物、東京渋谷のレコード会社 インパートメントの稲葉ディレクターに、カルロス・アギーレさんについてのコラムを、このフェアに際して特別に書いていただきました。稲葉さん、お忙しい中、私のわがままを聞いてくださり、本当に本当にありがとうございます!

それでは、稲葉ディレクターの美しい風景が心に浮かぶ素敵なコラムを、どうぞお楽しみください!



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言葉は窓
そこからは、歌と小川と山と
小道と一輪の花が見える

カルロス・アギーレが自身のグループを率いて2004年に発表したアルバム『カルロス・アギーレ・グルーポ』(通称「赤盤」)の冒頭を飾る曲「La musica y la palabra(邦題:音楽と言葉)」は、こんな一節から始まります。柔らかなタッチのギターのアルペジオに導かれ、語りかけるように歌い始めるカルロスの優しい表情が浮かんでくるナンバーです。


今年、6年ぶりにカルロス・アギーレの来日ツアーを開催しました。ツアーのタイトルは「La musica del agua ~ 水辺の音楽」。そのコンセプトは、自分が生まれ育ったリトラル地域(アルゼンチンのパラナー河に接した3つの州、そしてパラナー河を挟んだウルグアイ、上流に位置するブラジル南部にまたがる、先住民グアラニーが築いた広範囲な文化圏)の作曲家の曲を、自分の解釈とアレンジでピアノ弾き語りで演奏する、というものでした。
コンサートで披露するレパートリーについて、来日前にはメールでごく限られたやりとりしかできなかったため、ツアー初演となる東京公演の前日、通訳の方を挟んで詳しく打ち合わせする機会を持ちました。その時のカルロスの様子がとても印象に残っています。寡黙でシャイなイメージがあるカルロス、それも二日間にわたるアルゼンチンから日本への旅と時差のため疲れた表情だった彼が、コンサートで演奏するレパートリーについて説明する段になったとたん、楽しそうに目を輝かせソファーから乗り出し、言葉が迸るように話し始めたのです。あまりに白熱して予定の時間を過ぎてしまい、打ち合わせが終わりグッタリと眠そうなカルロスを見た僕は、翌日の公演にそなえ、その後のディナーの予定をキャンセルしてホテルに帰ってもらいました(笑)。

今回のコンサートでカルロスは、レパートリーに取り上げたリトラルの作曲家たちの曲について、自分の曲の何倍も時間をかけて説明していました。彼の「言葉の窓」から見えたのは、朝焼けとともに河から飛び立ち、夕方に河に戻ってくる鳥たち、お昼寝の時間に大人の目を盗んで町中を探検する少年など、リトラル地域の自然や人々の生き生きとした情景でした。


思えば、カルロス・アギーレのCDのブックレットには、必ずカルロス本人によるコメントが収録されています。それは散文のようだったり、夢を断片的に書き付けたメモのようだったり、曲が成長していく過程を記した日記のようだったり。音楽の力を借りて、その「言葉の窓」の向こうを見つめ、耳をすますと、日常の風景が別の色彩を帯びてくるようです。

言葉を大切に、さまざまな情景を描き出す詩人。宝物のように大切にしたくなる、心潤すメロディーを生み出す作曲家。幾つもの音色が有機的に融合しながらも、抑制された美を宿したアンサンブルを作り出す編曲家。時に水面に煌めく光のような夢幻の音色を奏で、時に情熱的なミロンガの早いパッセージを繰り出すピアニスト。「鳥のように、河の生態系の一部になりたい」と、パラナー河のほとりに暮らすどこか求道者のような佇まい……。
その全てがカルロス・アギーレという稀代のアーティストの姿であり、今回紹介する4枚のアルバムにはそんな彼の魅力が詰まっています。「CDのアートワークは音楽の住む家」という彼の信念へのリスペクトを込めて、オリジナル盤がハンドメイドのジャケットは、日本盤でも多くの友人の力を借りてハンドメイドで再現しました。どんな「家」なのかは、実際に森音の店頭で確かめてみてください。そして日本盤では全ての歌詞/曲コメントに対訳がついていますので、彼の「音楽と言葉」の魅力をじっくりと堪能して貰えたら、と願っています。
2018年2月 稲葉昌太(インパートメント)



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東京を代表するレコード会社の敏腕ディレクターでありながら「いわゆる業界人の仕事のやり方は馴染めないんです」と語る、稲葉さんが作るCDは、温かな手触りや、作り手の想いがじんわりと伝わる、長く手元に置いておきたい伝統工芸品のような、美しくも親しみやすい作品ばかりです。アーティストが音楽に込めた、愛や情熱を丁寧に汲み取り、時間や手間を惜しむことなく、ひとつひとつ心を込めて、制作されていることが、ジャケットデザインやライナーノーツからも、ひしひしと伝わってきます。さらにはディレクター自らジャケットをデザインしたり(デザインに使う素材を、自ら東急ハンズへ買いに走ったり!)、ライナーノーツを執筆したりと、音楽愛だけではなく、才能まで溢れ出してしまっている、本当にすごいお方なんです稲葉さんて。他にも英語がペラペラだったり、実はむかしプロのミュージシャン(ギタリスト)だったりとか、稲葉さんのハイスペック男子エピソードは、語り出したらキリがありません(笑)。それでいて、ご本人はとても気さくでユーモアのある方なので、全国各地、いや世界各国に稲葉さんを慕う方々がたくさんいらっしゃいます。本心とはいえ、あまりこういうことばかりを書くと、「ジュリさんホメ殺しの刑ですか?」と、シャイな稲葉さんにつっこまれそうなので、そろそろこの辺で止めておきます(笑)。少しお話はズレてしまいましたが、あらためてインパートメントさんや、稲葉さんに出会えたことで、私自身、本当にたくさんの音楽、そして音楽から繋がるかけがえのない縁に、巡り会うことができました。音楽のフェアを通して、森音に足を運んでくださるお客さまや、オホーツク近郊に暮らすみなさまに、世界各国の素晴らしい音楽をご紹介できる機会を与えていただけたことを、心から光栄にそして幸せに思います。稲葉さん、いつも本当にありがとうございます!

「カルロス・アギーレを音楽家として、人間として本当に尊敬しています。彼との友情がある限り、僕はこの仕事をやめないと思います」

これは以前、東京渋谷にあるバー「Bar Bossa」のオーナー 林伸次さんのブログ(https://www.jjazz.net/jjazznet_blog/2014/05/bar-bossa-vol33.php)で、稲葉さんがインタヴューで語られていた言葉です。グッときちゃいますね。そんな稲葉ディレクターの熱い想いが込められたこの4枚のアルバムを、ぜひ多くのみなさんに聴いていただけたらと心から思います。






店主です。6年ぶりに来日されたアギーレさんのコンサートへ、スタッフのジュリちゃんと行ってきました。東京の会場が、来日を待ちわびていた全国のファンの熱い気持ちと期待とで満ち満ちて、アギーレさんが登場し最初の一音を奏でたその時からそこはもう清々しい水辺となり、静まりかえった会場に響く音楽を一音たりとも聞き逃したくないと観客全員が集中し、体験したコンサート。その中で、アギーレさんが「心の中で強くなにかを願いながら次の曲を聴いてください」と始まった曲があり、言われた通り心の中に強く願いたい事柄を探してみたときにわたしの心に浮かんだ願いはとても意外なことに"世界の平和"たったそれ一つだけしかありませんでした。その曲のあいだどんどん強まる世界平和への願いと、ピュアでもなく俗っぽい自分にそんな純粋な願いが自然に心にわいて強まってくるアギーレさんの音楽世界、その人間的な偉大さに胸が熱くなり自然に涙がこぼれてきました。とっても個人的な、宗教的とも言える心の澄まされるような体験に、アギーレさんが時に神格化して語られる意味がやっとわかった気がしました。同じ時代を生きる世代にこのように偉大な音楽家が存在し、その作品に出会えたこと、これからも出会えることをとても幸せに思えます。
「音楽は人と人との出会いの可能性をひろげるもの」
フェアを重ねるごとにわたしもこの言葉をよく思い出しますし、音楽に、人との出会いにいつも感謝しっぱなしです。初日からたくさんのご来場ありがとうございました。通販でのご参加申し込みも届き始めました。ありがとうございます。そして稲葉さん、フェアのために寄稿してくださりありがとうございました。稲葉さんとの出会いとひろがりにも、いつも心から感謝しています。

フェアは26日(月)まで開催しています。カルロス・アギーレ作品と、そのほかにもおすすめしたい音楽を並べてみなさまのお越しをお待ちしております。



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